清原 2024.01.31

Blog耐震診断  住まいの細部を考察する Vol.34

耐震診断を年に5件ほどやっているとだんだんとわかってきます。

小屋裏の様子を見る

最近は机上の計画まで立てろとの京都市からの指令で、計算式をあーだこうだと改修計画をたてるのですが、この計算式の難しいところに補正係数というものがありまして、何かと低減係数がかかります。劣化度による低減係数は外壁の亀裂、基礎の割れ、樋の傷み、バルコニーの傷みなど、この劣化度の低減係数はかなりざっくりとしたもので全体を0.7掛けにしてしまいます。これは改修後も消えないので、傷みを補修しても低減は変わりません。そこはどうにもできない決まりでして、ちょっと実状にそぐわないような部分もあるかと思います。

また、耐力壁に対して、柱頭柱脚の取り付け方法が現行基準にしたがった金物がついていればいいのですが、耐震診断をするような昭和56年以前の建物はほぼ付いていません。これにより低減係数がかかりますが、耐力が強い方が低減される率が高い。耐力壁に直接かかる低減係数はかなり大きく、改修計画の時に耐力を増強するよりも金物を取り付けた方が結果の数値は良くなります。

壁の耐力が予定通りに働くというのは、軸組が外れないことが前提になっているということです。新築の時も同じですが実験通りの耐力を働かせるための条件ですね。

耐震診断の耐力壁というのは、ラスモルタルの壁や、化粧合板t3の壁なども細かく拾い上げて、総合的な耐力と見立てます。なので、筋交や構造用合板が入っていなくてもそこそこ耐力はあると見立てています。でもそこそこですが。

それともう一つ、バランスの低減係数がかかります。偏心率による低減ですね。

耐震診断書の1ページ

こう見ると、計画的に建てられたものから、そうでない部分があるたびに低減が掛かっていく、といった計算になっているようにも見えます。

それと一番決定的なのは建物の重さです。軽い屋根なのか、瓦屋根なのか、また土葺瓦なのか、これによって必要耐力が大きく変わります。診断の数字を上げるのに一番簡単なのは屋根を葺き替えることです。これもかなりざっくりとした分類しかないもので、実状を反映させるのは難しいのです。土壁もかなり重たいと思いますが、そこまで細かく重量を拾い上げることができません。難しい所ですが、「重いものを支えるのには耐力がいる」といったことですね。それだけがわかります。

昔の職人は腕がいいとか言いますが、庶民の家にはそんなに腕を振るった建築物はありません。経済の理論で早くたくさん造られたものばかりです。今でもそうですよね。