Works恵まれた自然環境に里山のイメージを落とし込む  しまもと里山認定こども園

About

もともと島本町第二幼稚園が建っていた本敷地は、日当り眺望共に恵まれ約4950㎡(1500坪)の広さがあります。北に古くから水瀬山と詠まれた山を望み、山裾を流れる水無瀬川が道路を挟んで目の前に流れています。西隣りは中学校のグランド、南には擁壁下に田畑が広がっています。
 計画の当初から、法人理事長からは里山のイメージで計画してほしいという依頼がありました。のびやかな周辺環境と三角形の敷地形状を生かして、三つの木造建物に分節して配置することで、山を背景に溶け込む集落のような屋並みが生まれました。
 真ん中の給食・地域棟は2階建で大きな屋根を持つダイナミックな建物です。その両サイドに羽を広げるように建つ乳児棟と幼児棟は平屋建てのお家らしい形にしました。これらをつなぐ渡り廊下は、できるだけ軽やかに見えるように白いスチールとガラスで作られています。3つの棟には縁側のような外部テラスがあり、それらはずっと庇下でつながり全長約90mにもなります。
また敷地がなだらかに低くなっていることや、南に向けて視界が開けていく地形の変化も計画に生かし、奥に建つ幼児棟は床レベルを下げ、3棟を南に広がっていく形にしています。
 敷地外周部の大きく育った木を残しながら、里山にふさわしく建物に近いところに花や実のなる様々な樹木や草花を植え込みました。

Data

工事種別
新築工事
建築主
社会福祉法人 照治福祉会
所在地
大阪府三島郡島本町
敷地面積
4952.34㎡
構造・規模
給食地域棟:木造2階建 準耐火建築物 655.40㎡(198.2坪) 乳児棟:木造平屋建 その他建築 436.50㎡(132.0坪) 幼児棟:木造平屋建 その他建築 462.50㎡(139.9坪)
延べ面積
1554.40㎡
施工者
株式会社長村組
竣工
2020年10月

 

全景写真   しまもと里山認定こども園 http://shimamoto-satoyama.com/


給食・地域棟  2階建て準耐火建築物で、大きな屋根が特徴です。みんなの玄関、遊戯室、事務室、給食室などがあり園の要となる棟です。  遊戯室は、幅17m 奥行き14m天井高4~6mあり、木造でこの大空間を実現するために、「張弦梁構造」を取り入れました。これは、木造の梁(横材)にスチールの引張材を組み合わせたハイブリット構造です。梁の両サイドに三角形を描いている白い2本のスチール線が引張材で梁を上に引き上げる役割を果たします。  こうした長い木材には集成材を使用していますが、可能な限り国産の桧や杉を使っています。一番高い部分を支えている独立柱には桧の無垢材21㎝角が使われています。柱や梁の断面寸法は、構造だけでなく耐火性能を満たすために必要な燃え代を加算するため大きくなりますが、それがダイナミックな空間形成につながっています。  天井の高いところにある3つのプロペラは、室内の空気を緩やかに対流させる役割を果たします。


給食室は、子ども200人+大人の食事やおやつを作るため機能満載です。子どもたちと給食の先生が同じ目線で話ができるように、給食室の床は20㎝下げています。乳児の給食はワゴンで運ばれそれぞれのお部屋で、幼児は遊戯室で食べる想定です。


遊戯室の奥に「一時預かり室」と「地域交流室」が小さなアルコーブ(くぼんだところ)のようにあります。窓際の一角には絵本コーナーとしても使えるように絵本棚やベンチなどをしつらえました。

幼児棟 3歳児から5歳児までのお家です。単純な切妻屋根でどこか懐かしい校舎のような外観をしています。


保育室―内部廊下―半屋外テラス(縁側)―園庭、この中から外へのグラデーションは、日本建築でよく見られる空間構成です。季節の移り変わりや1日の過ごし方の中で使われ方も様々に変わっていきます。

 

保育室は、縦割りの4クラスで構成されています。それぞれが85㎡ほどの広い面積を有しますが、独立柱や梁が程よく空間を分節してくれています。保育室の間にある教材室は、子どもたちが自由に教材を選んだり作品を置いたりできる小さな空間になっています。ここを通って4つのクラスもつながっていて、子どもたちが自分の居場所や活動を自分で選ぶ保育を象徴しています。


乳児棟 0歳児から2歳児までのお家です。お家の前に乳児さんの園庭が広がっています。


中廊下のトップライトから、空の景色と光が注ぎます。


1歳児室の間には小上がりの畳の間をしつらえました。内装に珪藻土を塗り、本物の障子を入れました。少人数で過ごしたり、ゴロゴロ寝転がったりできます。


1歳児便所 子どもにとって明快な配置と明るい雰囲気に


0歳児室には南の園庭を見下ろせる広いテラスがあり、手すりもできるだけ透明感のあるデザインにしました。手すりは2箇所開けられるようにしてあります。

 

遊戯室と幼児棟の入隅に日除けテントのあるレンガ敷きのステージがあります。夏はプールが置かれ、それ以外の季節も水遊び、外でのクッキングなど多目的に使えるスペースです。


園庭は起伏のある築山や木のステージや一本橋など、魅力に溢れています。子どもたちはそれぞれに好きな遊びを選びます。(園庭デザイン:INDIGO)


正面の門は、屋根を木造にし、垂木や野地板に桧をつかっています。銘板は陶芸家に焼いてもらいました。アプローチの広場には丸太のベンチを置きました。床には9つのモザイクタイルが敷き込まれています。これは、先生方7チームと施工者、設計者チームの作品です。7つのモザイクタイルは10クラスの名前がモチーフになっているそうです。


クラスの名前が描かれたモザイクタイル


陶芸家山下透さんに焼いていただいた銘板