Works想い出を埋め込んで建て替えた家

About
元の住まいは前庭を眺めながら玄関に至るアプローチが素敵で、裏庭も古い板塀があり樹木もよく手入れされていて風情がありました。家の中も古いものを大事にされている様子が伺われ、そうした良さを引き継ぐことが大切だと私たちは考えました。反面、持ち物が増えて整理がつかない悩みもあり収納をどうするかは建て主のご夫婦と相当に検討を重ねました。
庭の位置を前とあまり変えないですむように建物を配置し、樹木の一部はそのまま現場で保存しました。建設に支障となった樹木も工事の間ずっと植木屋さんに預かってもらって、建物完成後再移植しました。以前の前庭は家の中からはあまり見えませんでしたが、今回は道路ぎわに板塀を設け外部からの視線をある程度遮れるようにして、庭に面した大きな引き込みのテラス戸を設け、屋内からも前庭の眺めを楽しめるようにしました。一、二階ともに仕切りの建具を開けると一室にでき、前庭と裏庭をつなぐ伸びやかな空間になります。風も良く通り、以前の建物に比べて間口は減り面積も小さくなったのですが、広々と感じられるよう工夫しました。
収納については持ち物の総量をつかみ、建て主さんには必要な物とそうでない物の区分けをお願いし、私たちはそれに応じて既存家具の置き場を検討したり収納計画をつくり、それを何回も擦り合わせて設計を練り上げていきました。竣工から一年が過ぎましたが、一つ一つの物がその居場所を得ているようでホッとしました。
一階の床はくるみ材を古色仕上げにし、一部の壁は土塗り壁で仕上げて少し古びた感じをだし、新築なのに元の家の気配がするような内装にしました。大事に使ってこられた家での大切な記憶を、新しい建物の中にうまく埋め込みたいと思いながら進めた仕事でした。
Data
- 敷地
- 京都市
- 構造・規模
- 木造 2階建て
- 延べ面積
- 102.77㎡
- 施工
- 村尾工務店
- 竣工
- 2018年3月
外観
保存した松が歴史をつないでいます。
居間から前庭を見る
前庭側の建具は引き込んで全開にでき、馴染みの樹木を楽しめます。床はくるみ材で古色仕上げ、かべの濃い色の部分が土塗り壁です。
ガラス戸を開け放し、ガラリ戸を閉めて施錠すれば安心して風通しができます。
1階は和室の建具を引き込むとワンリームになり前庭から裏庭までがつながります。
寝室として使われる和室の床の間
床柱は北山丸太の天然絞りを面皮を残して製材しました。
夫婦二人で一緒に炊事するスタイルに合わせて作ったキッチンです。
2階の書斎
解体前の家にあった背の丈柱を移設しました。子どもさんたちの成長の印の横に、新たにお孫さんの背丈が刻まれています。