Works森と水辺の幼稚園 -長尾幼稚園-

幼稚園

About

 敷地はなだらかな丘陵地の頂部から南斜面地へと広がる場所で、その西側に「大池」があります。同じ系列の法人が運営する「長尾保育園」に隣接していて、一帯は子育て支援の拠点となっています。
 幼稚園は老朽化も進み建て替えが大きな課題となっていました。「仮設園舎をつくることなく建て替えができないだろうか」と相談があり設計がスタートしました。広い園庭とその一角にある築山はできる限りそのまま残したいとの要望が出され、屋外での遊びや自然を大切にする強い想いが伝わってきました。
 園庭や築山を単に「残す」だけでなく、さらにその良さを発展させようと考えました。駐車場として使われ大規模に造成されていた南斜面地の西側を「遊びの森」として整備し築山とつなげ、かつてあった里山の風景を再生しようと試みています。「大池」の周りは水辺の自然が豊かに残っています。アトリエ棟は森と水辺をつなぎ、森での遊びの基地となるように構想しました。
 保育室11室、アトリエ棟も加えて12の部屋の床材は全て国産で異なる樹種の無垢材を使いました。アサダ・カバ・カエデ・ヤマザクラ・ブナ・ケヤキ・ナラ・タモ・シイ・ホオ・オニグルミ・クリの12種類です。それらを「クラスの木」と位置付けて「遊びの森」に植えています。北山杉の天然絞り丸太と垂木丸太を使ったオブジェを玄関などにあしらいました。アトリエ棟は木造で柱・土台がヒノキで梁がスギ、外壁はカラマツです。柱や梁の多くは見えるようにデザインしました。
 ふんだんに使われている木材を見て触れ、香りを感じ「遊びの森」を駆け回ることで、人の暮らしが自然と共にあることを五感を通して体験できればと考えています。「遊びの森」の若木が大樹に育ち、建物が使い込まれ床の木目が浮き出た頃がこの建物の本当の完成なのかもしれません。

Data

建築主
学校法人 長尾学園
敷地
枚方市 6548.40㎡
構造・規模
本館・保育室棟 RC造 地下1階 地上2階  アトリエ棟 木造 平屋建て
延べ面積
2011.67㎡
施工
誠信建設工業株式会社
竣工
2022年3月

幼稚園配置図

道路に面して建つ本館棟

幼稚園正面から見た外観

幼稚園玄関ホール
右奥が北山杉のオブジェ

幼稚園吹抜けにある遊具のような階段。その上部に設けたトップライトから砂漆喰で塗られた壁に柔らかな光がそそぎます。階段奥がランチルーム、手前は絵本コーナーです。早く食事を終えた子どもたちが階段下のトンネルや絵本コーナーで楽しみながら待てるようになっています。

幼稚園階段下のトンネル

幼稚園2階 ホール

幼稚園遊戯室
近接して厨房からダムウエーターで食事を運び上げる配膳室を設けたのでランチルームとしても使えます。

幼稚園遊戯室の外、園庭に面した広いテラス
正面が保育室棟
運動会では格好の観覧席になります

斜面地に建つ保育室棟

幼稚園保育室棟南外観
斜面地に建っているので一層目は園庭側から見ると地下になります。
築山にあった桜の老木が残るように設計しました。桜の老木は歴史をつなぐシンボルです。

幼稚園北側外観
園庭から見ると2階建で大きな窓が特徴です。
左は本館棟で保育室棟とL字型につながっています。

幼稚園

幼稚園上は階段室から見た桜。ベランダからは花びらに手が届きそうです。

幼稚園保育室
全ての保育室には、南むきの掃き出し窓の外にウッドデッキの広いバルコニーを設けました。保育室の延長として使え、緊急時には安全な避難経路になります。

幼稚園廊下は北側になりますが窓際で天井を高くし、可能な限り大きな窓を設けて明るくしました。廊下は子どもたちの作品を飾る大切な場所でもあり、窓には作品展示に使える格子戸を設けて十分な量が貼れるように工夫しました。

幼稚園地下の北側(園庭側)に設けたドライエリア
子どもたちの格好の遊び場になっているそうです。いつかレンガの壁がアイビーで覆われるかもしれません。

幼稚園階段最下部に設けた図書コーナー
隠れ家のような楽しさがあります。

幼稚園廊下に設けたアルコーブは集団から少し離れてホッコリできる場所です。

水辺に建つアトリエ棟

幼稚園東側外観

幼稚園アトリエ棟の内部に入ると大池が一望できます。

幼稚園ここは名前の通り創作活動をする場所で、何日もかけて一つの作品をつくることができます。また日常から少し気分を変えて様々な活動ができるフリースペースでもあります。空間は遊びの森へと続く広い土間と、板の間、大池を一望できる奥行き3mのバルコニーで構成されています。

幼稚園バルコニーには深い庇があり、雨の日でも使えます。